八木啓代のひとりごと 2004年度下半期

(12月26日 記)

12月16日に、立川自衛隊官舎反戦ビラ事件、無罪判決が出ました。

あの程度で逮捕ということ自体が異常なわけで、無罪で当たり前やろう、とは思いつつ、喜んだのもつかの間。検察は控訴するようです。トイレの反戦落書き事件も有罪に持ち込んだので、なにがなんでも、反戦の動きを弾圧しようとしているのでしょうか。
でも、これはもう、政治的に右だとか左だとかいう問題ではなくて、かなり恐ろしい状態だとしか思えないですね。それを、まるで些細なことであるかのようにしか報道しないマスコミはもっと恐ろしいのだけど。

そして、何年か経ったあとになって、必ず、「あのときはみんなそうだったから」とか「実態を知らされていなかったから」と言い訳をする人が出てくるわけです。前の戦争は、数百万人の犠牲を出しても、それで済んだからなんでしょうね。
そして、傷口を糊塗して、本当に都合の悪いことは「なかったこと」にする。
都合の悪いことを語る人が出てきたら、それが日本人ならば「自虐的」、外国人ならば「嘘つき」だと大声で叫べば、都合の悪いことを知りたくない人たちは、気持ちよく信じて、根拠のない優越感に浸ってくれるというわけです。
そして、自分は、あとで責任を取らなければいけなくなると、自分だって騙されていたり、利用されていた「ふり」をする。つねに、そして、すべて悪いのは他人です。これを、わかりやすい日本語で、卑怯と言います。卑怯でない人は、たとえ、真実、騙されていたり利用されていたのだとしても、そのせいで、他人に莫大な被害を与えたら、それを心底恥じるものです。騙されるのは騙される方も悪いのですから、当然、責任者は潔く腹を切るべきですし、百歩譲っても、資産をすべて返上して隠棲するべきでしょう。それを武士道あるいは、西洋でいう「ノーブレス・オブリッジ」といいます。

そういう意味では、騙されていたり、利用されていた「ふり」をしていたのだか、真実、騙されていたり利用されていたのだかはわからないけれど、いずれにしても、いちばん卑怯な人がいちばん上の方でおめおめ長らえることを許した国では、ましてや、こと民主主義となると、「一人一人に重い責任がある」と考えるのではなく、「責任は皆に分散されるから、その重みは限りなく薄くなる」と考え、その場の気持ちよさだけを求めて、皆で傷口を舐めあう方向に向かってしまうのは避けられないのでしょうか。

などと思っていると、この23日、今度は葛飾で共産党員の逮捕です。「都議会報告」のビラを配って、現行犯逮捕。
私はかならずしも共産党支持者ではないけれど、まじで、これ、冗談じゃありませんぜ。
おい、ほんまに日本はどこへ行くんだ。


(12月17日 記)

さて、代々木ナルでのライブ。
はじめてのお店でしたが、たくさんの方に来て頂けました。どうもありがとうございます。
パーカッションの渡辺亮さんは、妖怪系イラストレーターでもある方。(くわしくは、彼のサイトをご覧ください)
じつは、彼とも初顔合わせ(ほとんどぶっつけ本番)のライブだったのですが、共通の知人がいることがわかり、盛り上がってしまいました。とても久々にお目にかかるお客さんもおられて、ゆっくりお話しできなかったのが、残念。(じつは、開場直前までリハをやっていた)
でも、黒田さん、タフですね。直前まで坂田明さんの、それも相当にハードなスケジュールで長期間のツアーが開けたばかりだというのに、パワフルなんだもの。で、ファンの方から、彼女に紅いバラ。似合っていましたね。
私への差し入れば、なぜか日本酒一升瓶。これはこれで似合っていましたね。(爆)

正統派のジャズのお店とあって、オーナーの顰蹙を買わなきゃいいななと思っておりましたが、喜んで頂けたようで、次回のライブも決まりそうです。
また、銀座にできたホールからのお話しもきているので、来年は、弾き語りのライブも復活するかもしれません。なんか、八木、盛り上がっております。
ただ、気候のせいか、声のテンションとコントロールがちょっと落ちていたような気が(自分で)するので、声の作り直しもやらなきゃね。


(12月14日 記)

この数日のうちに、なにかが起きそうという予感はあったのですが、チリの元大統領アウグスト・ピノチェトが訴追されました。
ついに、チリ国民が、彼を裁くときがきたのでしょうか。
(註:この「予感」というのは、霊感的なモノではなく、根拠のあったものです。詳しくは本日のモノローグの後半を参照)
ピノチェトって誰、という方もおられるでしょうし、逆に、ピノチェトって以前に逮捕されてなかったっけ、と思った方もおられると思いますので、ここ数日のチリでの激動をお知らせするにあたって、少々おさらいから始めたいと思います。

ピノチェトは大統領退任後も陸軍最高司令官でしたが、1998年3月に辞任。法的訴追を受けない特権を持つ終身上院議員に就任。
※チリの憲法では大統領を6年以上勤めた者は「終身国会議員」となることになっており、不逮捕特権が認められていた。ただし、この条項は、ピノチェト本人が作ったもの)。

ところがどっこい、98年10月14日、スペイン全国管区裁判所のガルソン予審判事が、人道に対する罪(大量虐殺、集団暴行、殺人)について、逮捕状を発行。直接の理由は、その中にスペイン人70人が含まれていたことで、INTERPOL(国際刑事警察機構)を通じて、当時、病気療養と称してイギリスに滞在していたピノチェトの逮捕をイギリス当局に要請。
これを受けて、10月16日、ピノチェトは滞在先のロンドンで、73年9月11日から83年12月末の間に、スペイン系市民が殺害されたという容疑で英国警察に逮捕される。これをきっかけに、欧州全域に亡命したチリ人が次々にピノチェトを提訴しはじめた。
これに対して、チリのフレイ大統領は外交特権侵害として英国政府に抗議。右翼勢力もサンティアゴの英国・スペイン大使館周辺で抗議行動を起こし、一方で、反ピノチェト派は支援行動を起こした。チリ国内世論は左右にまっぷたつに別れ、騒然となる。

一方、10月26日、英高等法院予審開始。10月29日、英高等法院「逮捕違憲」の判断。その後、日本の最高裁に当たる英上院での審理では、11月25日「逮捕合憲」の判決。
さらに、1999年3月、英上院はピノチェト元大統領の免責特権をも否定。逮捕を適法とすることを圧倒的多数で新たに裁決。1988年9月29日以降のピノチェト元大統領の拷問の人権抑圧に対する罪を英国で問えるとの判断を下した。
このとき、サッチャー元首相は一貫して逮捕に反対。ピノチェトが獄中にあるときも、何度も慰問に訪れていた。(これに関しては、フォークランド紛争の時に、チリが英国側についたという恩義も背景にある)

※それと、この件に関しては、ピノチェトは「ぜったいに」裁かれるべきだが、チリ国民が裁くべきであって、スペインや英国が裁くというのは、国際法的にはおかしいし、大国のエゴが見えているだと八木は思う。英国上院がなんぼのものか。
この論法なら、アメリカがパナマやアフガニスタンやイラクの政治家を勝手に裁くというのとやっていることは本質的には変わらない。
そういう意味では、フレイの抗議はまったく正しい。
このままでは、ピノチェトは幸せな天寿を全うしてしまうのかと思うと断腸の思いだが、それでも、この件はちょっと違うのではないか。

(当時、マスコミ関係者に意見を求められてそう述べたし、インターネット上でもそういう内容を書き込みをしたら、「ピノチェトの援護をするのか」と一部「左派」の人から批判された。そういうつもりはまったくなかったんだけどな。で、新聞にはコメント自体載らなかった。)

しかし2000年はじめになって、英国のストロー内相は、ピノチェトがスペインでの裁判に耐えられる健康状態にないとの医師団による診断結果を理由に、スペイン司法当局からの身柄引き渡しを要請を拒否。その年3月3日、ピノチェトはチリ空軍機で、英国での逮捕から1年半ぶりにチリに帰国した。この間、相当な政治的駆け引きがあったのは当然。

ところが、2003年11月24日になって、ピノチェトは、マイアミの極右系テレビ局「22チャンネル」のインタビューを受け、その大統領在任中での人権問題に関して、「何ら謝罪することはない」と述べた。それどころか、自分がマヌエル・ロドリゲス愛国戦線(ピノチェト時代に、共産党左派から分かれた武装ゲリラ抵抗組織)に暗殺されそうになった事件をあげ、マルクス主義者から「自分の方が謝罪されるべき」とのたまい、自叙伝も執筆していると元気に発言。
これが、当然ながらチリに伝わって、チリ民衆は激怒。これが原因で、最高裁はそれまでの判断を一転する引き金となり、2004年5月に、彼の不逮捕特権を剥奪する決定が出た。

2004年7月には、米国の地銀リッグス銀行が、ピノチェトの金融資産隠しに手を貸していた事実が米議会上院の調査で判明。ピノチェトの親族にも捜査の手が伸びることに。また同年8月、チリ議会はピノチェト軍政下などで反体制活動を行った服役者32人(つまり、当時、政治犯としてではなく、一般犯罪者扱いで逮捕され、有罪判決を受けていた)に対する特別恩赦法案を承認した。
そして、11月末。ラゴス大統領はピノチェト時代に拷問を受けたと表明した2万8千人に対し,チリ国家が月200ドルの終身年金を支払うと発表。当時拘束された人の94%が拷問の対象となっており、証言した3400人の女性のほとんどは性的暴力の犠牲になっていたという。

このあたりから、事態は急展開。
ピノチェトの不逮捕特権剥奪については、それ以後も、ピノチェト側が控訴して争われていたが、チリのサンチアゴ高等控訴裁判所は、12月2日、カルロス・プラッツ軍司令官(アジェンデ時代の副大統領)を亡命地のアルゼンチンで暗殺した事件(1974年)の裁判に関して、ピノチェット元大統領(政権:1973〜90年)の不逮捕特権を剥奪する裁決を下した。
さらに、12月9日には、フアン・カルロス・ウルティア判事によって、歌手ビクトル・ハラを軍事クーデター(1973年)直後に殺害した容疑でマリオ・マンリケス元陸軍中佐が起訴。
http://espanol.news.yahoo.com/041209/52/waiq.html

そして、12月13日、フアン・グスマン判事が、チリにおいてピノチェトを訴追したわけですが、さっそくピノチェト側弁護士パブロ・ロドリゲスは、健康を理由に訴追を免れようと、その日の午後、赦免のための不服申し立て請求を出しため、現在、逮捕そのものは凍結状態。ピノチェト擁護派も、グスマン判事の人格攻撃や誹謗中傷をはじめている。
http://www.terra.cl/noticias/noticias.cfm?id_reg=443560&id_cat=1675

その一方で、ピノチェトの長男(ラテン世界によくあることだが、親と同名のアウグスト・ピノチェト)は、盗難車を(承知で)購入した罪で、同じく13日、541日の禁固刑の有罪判決。ただし、執行猶予付きなので、刑務所には入らないらしい。ただし、同時に発覚した武器の不法所持で罰金刑。親が人殺しなら、子供は泥棒の片割れのようで。
http://es.news.yahoo.com/041214/4/3swa8.html

しかし、数年前なら揉み消されていた、このような事件が明るみに出たこと自体、ピノチェトの求心力が非常に弱まっている証拠ともいえ、いま、訴追は凍結状態とはいえ、今度こそ、の期待はかかります。
グスマン判事には、是非とも、がんばっていただきたい。


(12月4日 記)

さて、引っ越しでした。
引っ越しって、ホント疲れますね。最近、物欲がなくなってきたと感じているわりに、よくぞこんなにモノがあること。
しかも、その大半が書籍と音源の資料なので、処分するわけにはいきません。というか、忘れた頃になって、調べる必要が出てくることがよくあるのですよね。

前回の引っ越しでは、埃を吸って喉を痛めたので、ライブを控えてもいる今回は気をつけて要所要所でマスクをし、喉あれは回避したのですが、ひとつやればひとつ抜けていて、ダンボールの梱包と開封で、手がガサガサ。指紋がなくなってしまったので、いまなら素手で犯罪を犯せそうです。(笑)
黒田さんとのライブだからまだいいけれど、指が痛くて、ギターが長時間弾けないぜ。
こうなっては、とりあえず、こまめに尿素入りのクリームを塗るしかありません。皆さん、引っ越しの時は、ちゃんと軍手をして作業しましょうね。
でも、引っ越しで住環境は良くなったので、よい気分です。特に私の仕事部屋は日当たりがよいので、昼過ぎは、仕事を放り出して日向ぼっこをしたくなるほどの心地よさ。(おいおい)

その一方で、イラクはさらに混迷しています。それでも選挙を強行するらしい。
大量虐殺の血の上に、民主主義ですか。
ある人が、「日本は『民主主義を学ぶ』のために原爆で30万人アメリカに殺された。それに引き替えれば、イラクはまだマシ」と言っておられましたが、そのアメリカはと言えば、選挙の結果について、あちこちで疑惑が報道されている始末。これがアメリカ人の語る民主主義というわけです。
(もっとも、アメリカ人がみな異常というわけではありません。カート・ヴォネガット・ジュニアは、こんなコラムを書いていますし、こういうサイトも存在します。)で、30万人虐殺された日本が、アメリカを尻尾を振って支援するというのも、真っ黒なギャグですね。非戦闘地域ではないサマワにいる自衛隊は、オランダが撤退したら、誰に守ってもらって水を汲むのでしょう。


(11月15日 記)

結局、我が家の引っ越しは24日に決定。

で、フリーランスの強みで、引っ越し日は業者さんの都合に合わせるという条件で、インターネットを通じて、数社に申し込み、家に来てもらって、見積もり依頼しました。

ちなみに、3DK分の荷物、同じ区内、梱包とダンボール開けは自分で作業、家具の設置・引っ越し後のダンボールの回収・エアコン移設2機分込み、万一、荷物が積み込みきれなかった場合も追加料金なしという条件で、来た順に、

A社84,000円(午後便・作業員3名)
B社67,200円(午前便・作業員2〜3名)
C社100,000円(午前便・作業員3名)
D社120,275円(午前便・作業員4名)
E社68,500円(午前便・作業員3名)
F社73,500円(午前便・作業員4名・タンス丸ごと移送・組立家具の解体組立作業込み)

いちおう、全社、値段交渉したのですが、営業マンの問題か、C社とD社はほとんど値引きには応じなかったです。(D社は、半額割引してこの値段ですから、と)

A社は、文字通りの速攻で、インターネットで申し込んですぐ電話が来て、それから数時間後に営業マンがうちに。で、最初110,000円程度の見積もり。ただ、B社も見積もりに来ると聞いて、ぐっと値段を下げてきました。

B社は、「新しい会社で知名度もないので、うちは安さで勝負します」と言いきって、最初から、この額を提示。

E社は、一通りの説明のあと、98,000円程度の見積もり。こちらの反応を見て、この値段では勝ち目がないと感じたらしく、「いままで来たところで、一番安いところは、見積もりおいくらですか?」
67,200円と聞くと、その場で会社に電話かけて上司に報告。「では、うちは、作業員3人でこの値段にします」

この時点(昨夜)で、B社は確かに安いけれど、作業員2人ではやっぱりちょっと不安なので、このE社に決めかけていたのですが...。

最後のF社は、最初、110,000円ちょっとを出していたのですが、「見積もりは他でもなさってますよね。いま、最終候補に残っている会社は、率直に言って、おいくらですか」
で、E社の額と条件を聞いて、やはりその場で会社に電話して、上司に報告。
「うちは作業員4人なので、値引きはこれが限界ですが、組立家具の解体組立も、タンス丸ごと移送もやります」

その間、(昨日の夜)、最初に来たA社から電話が入って、「もし他社さんがうちより安いようでしたら、うちもこれ以上の値引きに応じる準備はあります」というのはあったのですが、内容とお値段を考慮して、F社に決めました。

結論から言うと、東京近郊で、荷物がそう多くない場合、または、手伝いの人手がある場合は、B社が、圧倒的に有利。

大手さんになるほど、サービスを売りにする度合いが強くなり、荷物を毛布ではなく特製シートで3重にくるむとか、ダンボールの他に食器梱包用のハニーペーパー(というらしい、ひらひらの紙)も用意するとか、いろいろあるようです。
また、ダンボールは、ほぼどこも事実上無料。多いのは、最初の50枚は無料で、それ以上はリサイクルダンボール(他の客が一度使用したもので、汚れのないもの)ならいくらでも無料、という感じ。ダンボール回収も、サービスが当たり前みたいです。

で、大手系さんいわく、「うちの作業員は、全員、十分な研修を受けた社員ですが、小さい会社は、作業員がアルバイトだったり、日雇い労務者だったりします」
これに関しては、うちは、些細な傷でも泣きたくなるような超高級家具なんてないし、信条的には、このご時世、日雇いの人に少しでも仕事を回してあげることができれば、と思っているので、小さい会社でも問題は感じませんでした。どこも引っ越し保険に入っていることだし。ただ、タンスの中身をそのまま運んでもらえるのと、組立家具の解体・組立をやってもらえるのは楽ちんだな。

トータル的には、サービス重視なら大手。安さなら小さい後発会社。
そして、数社に見積もりを取って、値段を具体的にちらつかせて競争して頂くのが、お得みたいです。
ただ、おそらく3本指に入るそれなりに大手のF社が、ここまで本気で値下げ競争に加わると思いませんでした。


(11月14日 記)

ファルージャが大虐殺だってのに、食べ物の話をするのも何なんですが.....。

近所の人から、「はやとうり」をもらいました。九州の方ではよく食べる野菜だそうで、頂いたのは、庭に植えていたのを収穫したもの。東京でも実がなるようです。
で、見てびっくり。私は九州出身ではないのに、見覚えがある。
これは、メキシコの野菜チャヨーテではないか???
と思って確認したら、やはり同じものでした。

メキシコでは、チャヨーテはおなじみの野菜で、スープやシチューの具にしたり、グラッセにすると、冬瓜のような味でおいしい、握りこぶし大の野菜です。
ちょうど、九州出身の友達が訪ねてきたので聞いてみると、
「あっ、なつかしい」
九州では、みそ汁の具にしたり、豚脂をダシに味噌煮にしたりするそうです。これはおいしそうだ。

さっそく、油揚げとチャヨーテ(はやとうり)とネギで、おみそ汁を作ってみました。
激ウマ。これ、メキシコで応用できるな。(とはいえ、メキシコでわざわざ和食を食べたいと思ったことはないのだけど)
思いついて、柚胡椒を少し入れると、さらに美味でした。

今日のおかずは、これに、まぐろのカマのオーブン焼きです。
まぐろのカマは、粗塩をふって30分ぐらいおいて、出てきた水分をペーパータオルで拭いてから、味醂少量を手にとってぺたぺたつけ、高温のオーブンで20分。水分を拭くのと、みりんをつけるのは、臭み取りです。焼きたてはもちろん美味しいのですが、これをやっておくと、冷めても生臭さが出ません。
生野菜が高いので、冷凍のほうれん草をさっと湯通しして、叩いた梅干し+醤油+味醂の梅酢であえ、付け合わせ。

次は、はやとうりと豚肉の味噌煮にも挑戦してみることにしましょう。


(11月12日 記)

さて、大家の破産で家が競売にかけられる羽目になった八木、さっそく家捜しをしておりました。

もちろん、裁判所がこのあいだ計測に来たばかりですから、実際に競売にかかるのは数ヶ月先。
さらに、居住権というものがありますから、買い手がついたからといっても、すぐに追い出されることはありません。

ただ、ちょうど更新の時期にかかっていて、この更新が認められないため、居住権としてはやや弱くなるという点、いまの物件がすごく気に入っているわけではないので、今回の更新を機にいい物件があれば引っ越しを、と、もともとちょっと考えてもいた点、競売から落札との交渉までの何ヶ月間かを宙ぶらりんな感じで過ごすのもイヤだなあという点から、「急がないから、出物があったら教えてくださいね」と、知人知り合いや不動産屋さんに伝言しておいたわけです。

当然、近所の人や不動産屋さんから、いくつか物件の連絡がありまして、そのたび、それらを見に行っておりました。もっとも、いま住んでいる物件を探したときにも感じたことですが、予想していたとおり、帯に短し、タスキに長し、というのが多い。

当たり前ですが、安くて広くて駅近、なんてムシのいいのは普通はありませんわな。

霊が出るぐらいなら、私の念力でお祓いするとか、あるいは共存なら共存で小説のネタになるか(おいおいおい)と思っていたのですが、そういう物件は、お婆さんの霊程度ではなくて、たいてい、日照ゼロで湿気が凄いとか、畳ベコベコで雨漏りしそうだが大家はリフォームしない(その代わり、自分で好きに改造可。大工仕事が趣味の人なら、超お得か)とか、隣が工場で平日昼間は絶え間ない騒音がある(平日は夜に寝に帰るだけの、サラリーマンDinks夫婦なら、超お得だと思うけど)とか、やはり、ちょっと引いてしまうような「尋常ではない」理由があるわけです。

....と思っていたら、なんと、見つけてしまいました。
JR/千代田線/日比谷線北千住駅から商店街を徒歩6分。
この広さで、このお値段、しかも築年数こそ古いけど、かなりしっかりリフォームしてある、という物件。もともと大家さんの親族が住むために改装して、しばらく住んでいたけれど、事情が変わって空いたので、急遽貸すことにしたのだとか。それが、このへんの相場をよく知らないとしか思えない価格設定で近所の不動産屋さんに持ち込まれたのを、そこの親父さんが、速攻で電話をくれたのです。

この不動産屋さん、いま住んでいる物件を斡旋してくれた店で、しかも、その後、北千住付近で部屋を探していた知人も紹介・成約したりということがあったので、今回の件では、ちょっと責任を感じてくれていたのかもしれないですね。
(しかも、不動産屋は、「この場所でこの家なら、○○円ぐらいの家賃でも借り手はつきますよ」などと大家さんに言ったりせずに、斡旋相手=わたしのことを作家だの何だのと大宣伝してくれたので、大家さんも喜んでいるらしい)

引っ越しの事情が事情なので、2ヶ月入れてある敷金がほぼ間違いなく、帰ってこないであろうということはとってもイタいのですが、かなり住環境は良くなる引っ越しとなるので、怪我の功名というか、災い転じて福となった感じです。
もちろん、住み始めてから、「こ......こんなはずじゃ」なんてことがあるかもしれないのですが。


(11月3日 記)

最初に手を挙げたライブドアは、因縁をつけてはじかれて、あとから手を挙げた楽天が、お金とコネの力で、プロ野球界参入が決まりました。

こういうの、子供になんて説明したらいいんでしょうね。

こんな大人たちがトップにいるんじゃ、野球は子供に夢を与える産業、という言葉は撤回するほかなさそうです。
もっとも、参入を認めたというだけでも、大きな進歩なのかもしれないけど。

昔、ビートルズが武道館で初来日公演を行ったとき、当時の正力読売社長が、「ビートルズなんて知らん」と発言したという話があります。今回のナベツネ氏の「ライブドアなんて知らん」に、あの会社の体質はほんとに変わっていないなあと、思うしかありません。


(11月1日 記)

私が、「悪役顔は選挙で勝利しにくい」という意味のことを書いたからでもないでしょうが.....出口調査のケリー優勢にもかかわらず、最終的には、ブッシュが大統領選に勝利しました。
ビンラディン氏のビデオ出演も、明らかにブッシュに有利に作用したようです。(この件についての、朝日新聞の論調は首をかしげるものでした。産経新聞がまっとうだった気がします)

出口調査の問題については、 このサイトや、このサイトで、その疑惑が指摘されています。が、それ以前に、18世紀スタイルのアメリカの大統領選挙制(選挙人投票制度)が、あまりにも問題があるといえるでしょうね。
この手法は、300年前の有権者数自体が少ない時代ならそれでも良かったかもしれませんが、現代において「民主的」とは到底いいがたい。
にもかかわらず、選挙方法改正の声が米国で上がらないのは、米国人が本質的に保守的であるということでしょうか。
いずれにしても、二大政党以外の候補者には極端に不利にできている、この投票制度のせいで、ラルフ・ネーダー氏は、しっかりと一部票を死票として葬り、ブッシュ再選におおいに貢献なさったようです。

(私が、ラルフ・ネーダー氏にきわめて冷たいのは、彼が本気で二大政党以外からの大統領候補者の当選の可能性を追求したいのであれば、いま大統領選に立候補するようなことをせず、現在の投票制度の改革のための運動なり裁判闘争から始めるべきだと思うからで、それをやらないで、しかも、ブッシュ陣営から選挙資金を受け取っているのでは、事実上、ケリー潰しに積極的に荷担しているとしか思えないという理由です)

いずれにしても、ブッシュが勝利した以上、米国は行くところまでいくでしょう。そういう意味では、あの国の破綻が早まるかもしれません。
そして、ブッシュ氏は、後の歴史に、数十万人のイラク人を虐殺した史上最悪の大統領として、ポルポトやヒットラーに並んで記載されることでしょう。
ファルージャでは、大虐殺が始まっています。私たちは、ただ、見ているだけしかできないのでしょうか。


(11月1日 記)

11月最後の週、上智大学で開催されたメキシコの詩人・ホセ・ファン・タブラーダについての連続講演を聞きに行っていました。
タブラーダは、19世紀末から20世紀末の、モデルニスモ(現代主義)と呼ばれるラテンアメリカの近代詩運動の中で活躍した一人で、一時、日本に滞在して日本文化に傾倒。浮世絵のコレクターとして、メキシコで展覧会を開催し、また、俳句をメキシコに紹介し、ノーベル賞作家オクタビオ・パスにも影響を与えた人としても知られています。
残念ながら、彼は、メキシコ革命の折、独裁者ポルフィリオ・ディアス側につき、それだけではなく、その時代に反革命的な論説を強硬にふるったため、革命後、ニューヨークに亡命せざるを得なくなり、その後も、メキシコの文壇で冷ややかな扱いを受けることになったわけです。

実をいうと、私は彼については名前を知っていた程度です。
しかし、あらためて今回、彼の作品に実際に触れてみて、繊細で優美な作風にちょっと驚きました。
ごく若い頃から、木の葉や昆虫や野鳥に美を見いだしていた「変わり者」の青年が、1900年のフランスのパリ万博で、日本文化に触れて驚喜し、その後に渡った明治の日本で、まさに彼の愛する身近の自然を題材にとる俳句や浮世絵にはまるのは、むしろ当然の成り行きだったようです。
この人の残したスケッチやデッサンやイラストがまた、プロはだし。
いまの時代に生きていたら、マルチ・アーティストといわれて持て囃されていたかもしれません。

それと同時に、その日本を紹介してくれたフランスにもかぶれていた彼が、シャンゼリゼを模してメキシコのレフォルマ大通りを建設し、ルネッサンス風の彫像を並べた独裁者ポルフィリオ・ディアスに心酔するのも、ある意味、政治音痴ゆえの政治傾倒といえるでしょうね。
彼のような人から見たら、「革命派」は、土まみれで薄汚くて、美的基準にあわなかっただろうからなあ。
(そういうセンスも、いまなら、持て囃されそうです)

じつはこの時代、かの堀口大学の父上がメキシコの日本公使館にいて、こちらは革命派の筆頭フランシスコ・マデロとの交流が深かったということを考えると、歴史に if はないですが、もし、フランス経由の日本かぶれであったタブラーダと、同じくフランス文化に造詣が深い日本詩人堀内大学の出会いが存在していれば.......とも思ってみます。

それはさておいて、今度のメキシコ大使館の文化担当官は、本職は詩人だそうです。詩集をみると、これがなかなか。
彼のセンスで、いろいろと文化交流企画も温めているようです。
わたしはPAN政権の外交路線と経済政策にはまったく同意していませんが、その一方で、オクタビオ・パス門下の優秀でやる気のある人たちがこういう仕事に登用されて、手あかのついた「基本的にはマリアッチ、テキーラ、ソンブレロでメキシコ万歳。ときどきマヤとアステカの遺跡ネタ」ワンパターン路線のイメージをぶち壊すために頑張るのであれば、それは素直に評価はいたします。うれしいことです。
(そういえば、オクタビオ・パスも、在日メキシコ大使館で文化担当官だった経歴があります)

ということで、メキシコ文化関係の面白い催しが増えそうです。


(10月17日 記)

一時期、ブッシュ陣営有利といわれていた米大統領選。
TV討論の結果、ケリー陣営が少し盛り返したようです。

話飛びますが、1999年の都知事選で、桝添要一氏が出馬したとき、ある知り合いの新劇系ベテラン俳優さんが、(あくまで酒の上の話です)、「あの人、きっと当選は難しいですよ」
確かに、あの知事選は、石原慎太郎氏、元国連事務次長・明石康氏、鳩山邦夫氏と、いわゆる激戦ではありましたが、とはいえ、当時は、彼もTVタックルなどで露出度が高く、人気のあったときです。その落選予測理由が凄い。
「だって、あの人、悪役顔じゃないですか」
そのベテラン俳優さんによると、人間はやはり直感的に顔を見るのだという。悪役顔のトップを抱くことに、無意識に不安を感じるはず。第一印象って怖いんですよ。
そうかなあと思いつつも、一理あるような気がしたのも確か。たしかに、政治家は一種の人気商売でもありますから、ルックスも大きな決め手のひとつにはなるだろう。

で、みなさんお気づきでしょうが、今回の大統領選民主党候補ケリーさん、これがなんといいますか『悪役顔』ですよねえ。ハリウッド映画なら、陰謀の裏で糸を引いている大物悪役役。
声も良くない。確かに、その点、クリントンはじつに憎めない善人顔だった。
だもので、じつは、TV討論で不利になるんじゃないかと、わたしなどは内心懸念していたのですが、よほどブッシュの答弁がひどかったようです。

というところで、笑えるサイトを見つけました。

http://atomfilms.shockwave.com/content/this_land/frameset.html


(10月12日 記)

台風の被害はいかがでしたか?
このところ、ジーン、フランシス、アイヴァンと、カリブ海をいくつもの台風が通過して、そのたびに被害が大きかったようなので、何度かキューバの友人たちに電話をしたり、メールをやりとりしたりしていたのですが、今度は日本です。
それにしても、今年は台風の当たり年です。地球温暖化などの影響もあるのでしょうか。農家の被害も大きいのではないかと思います。

さて、台風一過の翌日は、快晴かと思いきや、またどんよりとした空。
にもめげず、上京中の母親を連れて、合羽橋道具街に出かけます。(なんという孝行娘だ)
ちょうど5日から11日まで、合羽橋でもお祭り中。といっても、こちらは御神輿の出るお祭りではなく、普段は卸中心で日曜祝日休みの合羽橋商店街が、土日祝も開けて、一般客向けの大セールをやっているわけ。
(もちろん、普段でも、個人客の買い物は受け付けていますが)
去年、わたしが購入して大絶賛の『栗くり坊主II』ほか、耐熱のシリコンゴムベラや、なぜか温度計(料理用ではなくて、インテリア用)などいろいろ購入。やっぱり、合羽橋はいろいろなものがあります。
ただし、時間があるなら、普段の平日の方がゆっくり見られますけどね。


(10月9日 記)

秋晴れどころか、鬱陶しい日が続きます。

大阪から母が出てきたので、10月の第2金曜日、一緒に佐原の秋祭りに出かけました。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、千葉県佐原は、東京から日帰りで小旅行を楽しめる江戸情緒ある街です。もともと水郷地帯で、利根川を用いる水運の中継地として栄えた街で、伊能忠敬の出身地としても有名。江戸末期から明治初期の全盛期は、醤油や日本酒の倉も多かったところです。
その後、水運が衰えると共に、街自体もいわゆる経済発展から忘れられたかたちになったのですが、そういうところの常として、全盛期の建築物が美しく残っています。
かといって、さほど観光地化されていないところも魅力のひとつ。
この街の馬場酒造で売っている味醂は、昔ながらの製法でお米から作っているもので、コクのある絶品です。妙な添加物はないので、食後酒として飲むこともできるほど。(甘くとろりとしたお米のリキュールです)
また、油茂製油では、とても香りのよい胡麻油を売っておられて、この味醂と油を買うために、というのは半分口実(行かなくてもインターネットで買えます)、のんびりした気分を味わいに、たまに佐原に行くのが好きというわけです。
街に着いたら、お昼を創業天明2年の渋いお蕎麦屋さんでいただいて、街をぶらりと散策します。この日はあいにくの雨でしたが、小雨だったので、それはそれで風情もあり。

せっかく母と一緒なので、香取神宮にも足を伸ばします。
この香取神宮、佐原に出かけることがあれば、是非、なんとか足を伸ばしてみてください。交通の便が悪いせいもあって、いつも観光客はほとんどいない閑散とした神社なのですが、神社ではなく神宮と名乗るだけのことはあって、広い杜の中の建築はかなり荘厳です。
わたしは関西生まれで、京都や奈良の寺社仏閣を知っているので、関東のこの種の建築にはどうも点が辛いのですが、ここの神宮はかなり格が高いと見える。
問題は立地です。車があればなんてことないのですが、佐原から徒歩で行くのはあまりおすすめしません。観光地図でみると歩いて行けそうな感じがするのですが、実際は、かなりの距離があります。途中、かなり不安になります(笑・経験者談)
かといって佐原とのバス便は2時間に一本です。君ら、やる気ないやろう。
なので、利口な人はレンタル自転車で行きます。佐原の町中で借りることができます。
が、小雨の中を、いい年をした母親と、チャリで行くわけにはいきませんわな。転んで怪我でもされたらえらいことです。で、今回は、行きはバス、帰りはタクシー。(タクシーは、参道の団子屋で呼んでもらえます。神社にありがちな、あんこをまぶした蓬団子ですが、けっこうおいしい)
佐原に戻れば、雨の中を町の人がお囃子ともども、華やかな何台もの幣台を引いていきます。ただ、お人形にはビニールを被せてあるので、残念。この佐原囃子も、むろん録音テープなどではなく、とても風情のあるお囃子で、なごみます。聞けば、千葉県無形文化財らしい。
日が暮れてきたので、油と味醂を買って、ついでに、ついつい生酒も買って、夕食に向かいます。私のけっこうお気に入りの吉庭というコスト・パフォーマンスの高いフレンチ懐石のお店。うちの母親は、生粋の大阪人で、不味いものを食べさせると、そのあと数年にわたって嘆かれるので、旅先の食事だけは気を遣いますが、ここでは、すっかり上機嫌。
少し雨が本降りになってきたので、食後、駅に向かって、そのまま電車に乗ります。

で、その翌日を、強力な台風が襲うとは。
ただ、翌一日を、ほぼまるまる家に閉じこめられても文句が出なかったほど、佐原は母の気に入ったようです。


(10月9日 記)

恵比寿のガーデンシネマで「モーターサイクル・ダイヤリーズ」公開中です。
すでに、BBSの方でも話題になっていますが、若き日のチェ・ゲバラの貧乏旅行を描いた秀作で、じつは、ロバート・レッドフォード製作のハリウッド映画というので、ぜんぜん期待しないで(頼むから、『フリーダ』みたいな映画にしないでくれよ)、試写会に行ったのですが、これがうれしい誤算。
じつはこの映画のパンフにも文章を書いているのと、近々発売の『現代思想』にもゲバラについての記事を書いているので、重複を避けるため、あえて映画の説明はしませんが、これ、おすすめです!
主演のゲバラ役ガエル・ガルシア=ベルナルも魅力的ですが、一緒に旅する仲間グラナドスを演じるロドリーゴ・セ・ラ・セルナ、じつにいい味です!いるよねいるよね、ラテン世界にこういう奴って感じが、えらいリアル。
説教くささもないし、伝記というよりも、とてもいい青春映画に仕上がっています。


(10月1日記)

さて、競売がらみで、裁判所から見聞に。
いちおう、間取り図を作って、状況をお聞きになるだけ。
ただ、幸いなことに、実際に競売にかかり、結果が出るまでには数ヶ月を要するらしい。
しばらくは立ち退かなくても良いようだ。
そのうえで、新しい所有者が賃貸を続けるにせよ、立ち退きを求められるにせよ、条件を話し合えばいいらしい。ちょっと安心。しかし、折を見て物件を探した方がいいような感じでもある。
どこかにないか、交通の便がまあまあ良くて、ある程度の広さがあって、家賃の格安な物件。(ないって)
いっそ、メキシコに引っ込もうかなとも思うのは、曇り空が続くせいでもある。青空はどこに行った。


(9月26日記)

今度は、国立近代美術館のピカソ展に行ってまいりました。
ええと、「華氏911」は確かR15指定だったと思いますが、こっちのほうがよほどR15指定にふさわしいのでは......(^_^)
というのは、行かれた方はお気づきだと思います。というのも、テーマはすばり、『愛とエロス』。
知らないで、小学生の子供に名画を見せようと連れて行ったお母さん、途中から困惑したんじゃないでしょうか。(いましたよ、そういう人が)
むろん、ピカソですから、抽象ではあるのですが、それでもまあ、「これなーに」といわれたお母さんが絶句するような絵はございましたがな。

などというのは、おいといて。

いわゆる「大作家」ものの展覧会は、点数が多いと思ったら、その大半が習作や下書きやデッサンだったりすることがあるので、今回もそうじゃないかと、あまり期待していなかったのですが、これはとても面白く、内容の濃い展覧会でした。
改めてみると、ピカソ、画面の緊張感は凄いですね。まったく隙がありません。この完璧さは、さすがにただごとではありません。(註:作品の話。デッサンや習作や下書きは別です)
しかし、感動するかというとちょっと違う。なんというか、女性をテーマにした作品が並ぶものの、ある種の酷薄さが見えてしまうのです。明らかに彼は女好き。しかし、女性をモノとしてしか見ていません。単なる本能に基づくセックスの対象。対等の人間としては見ていない。むしろ、ある種の軽蔑......女なんて肉のかたまり、そうでなければ、金を浪費してうるさいだけ、そんな声が聞こえてきそうです。
天才であるのは認める。でも、ぜったい友達になりたくない奴だなあ。
そう思いながら、歩いていくと、突然、景色が変わります。
モノだった女性がいきなり「人間」に変わる。血が流れ、呼吸し、そして、愛おしさを込めて見つめている視線がそこにある。
慌てて少し戻って、解説を見ます。このころ、ピカソはマリー・テレーズという少女を見そめて、恋に落ちる。絵で見る限り、これは「女遊び」ではなく、本気だというのがわかります。彼女に会ってはじめて、女性を対等の人間として愛せるようになったのでしょう。少なくともそのときは。
それはちょっと感動します。なるほど、画家はおそろしい。とくに抽象画家は。


(9月23日記)

ええと、TVでごらんになった方もおられるでしょう。
国連大学前のクルド人家族の座り込みが、事実上の強制退去になり、また、一緒にいたイラン人男性が逮捕されました。

http://www.mkimpo.com/diary/2004/kurd_sit_in_2004.html

いったいこの国はどこまで行くのか、不安になることが続きます。とりあえず、できることを個人個人が考えるのが重要なのでしょうね。困ったもんだと思っていても、何もしないというのは、それを容認しているのと同じことなのですから。


(9月21日記)

東京国立近代美術館で、いま話題のRIMPA展に出かける。
ええと、じつは、私は好きなのですよ、琳派が。
で、見てきた結論。やっぱり琳派はすごい。きわめて高い技術のうえの豊かな遊び心。
ところが、この美術展、時代別に展示したのが失敗ではないかと思われます。というのも、いわゆる「琳派」は、桃山時代の本阿弥光悦、俵屋宗達に始まって、元禄の尾形光琳で花開き、文化文政の酒井抱一に続くわけですが、この光琳や抱一のセンスは凄い。とくに抱一の生きた時代は、山東京伝や十返舎一九、平賀源内なんていう顔ぶれが活躍していた時代ですから、まさに文化の爛熟期です。彼自身、川柳や狂歌の愛好家だったらしい。(ただこの抱一、姫路藩主の弟ですから、国では「バカ殿」扱いだったかもしれないんだけど)
つまり、琳派の特徴は、高い技術と美意識、斬新な構図に加えて、どこかに遊び心があるのですよね。

で、この抱一の江戸琳派の時代が終わると、明治に入って、愕然とするほど趣は変わります。
明治にも琳派を研究した日本画家はいるのだけど、モチーフをコピーしたって、それは違うだろう。あるいは、技術を真似ても、違うだろう。
さすがに横山大観になると、よく研究して、かなりの作品を残しています。ただ、その作品そのものは名作といえるのだけれど、本質的に違うものを感じてしまいます。
思うに、大観は優等生的なタイプで、冗談をかましたりするタイプではなかったのではなかろうか。琳派の先達の作品を誠実に研究し、己の技術を高め、熱意を込めて描いたのはわかるのだけど、遊び心をどうしても感じられないのだ。一生懸命マジになってるのが見えちゃ駄目なのよ、琳派は。描いてる人が心から楽しんでいるんじゃなきゃ。そこが粋の粋たるところなんだから。

そういう意味では、明治以後の「琳派の影響を受けた日本画」はどこか寒々しい。そして、その後に続く、「海外物」には、さらに違和感がある。どうも、ちょっと無理してる感じがする。ある意味、琳派的なのは、マティスぐらいだろうか。
もちろん、美術品をどう見るかは個人の感性の問題だし、どういう点に琳派的なものを感じるかも、個人によって違って当然だから、違う視点があって当然なのだけれど。

ただ、なまじっか展示を時代順にしたために、展示があとになればなるほど、トーンダウンしていく感じになったのは確か。会場で出会った美術関係者も同じことを言っていたから、そう感じた人は、私だけでなかったようです。


(9月20日記)

さて、蜂の件。
大家は行方不明で、家が競売にかけられていると知った矢先に、裁判所から、現況調査の調査をするので、何月何日の何時にご在宅ください、という通知書が届いた。
さすが役所である。こちらの都合はおかまいなしだ。しかも、不在の場合は、民事執行法に基づいて解錠して建物内にはいることもあるので、了承してほしいそうだ。
ま、とにかくそういうことで、蜂は自力解決するしかないと思っていたら、近所のお兄さんが、夜、蜂の動きが鈍いときに、見事撤去。ありがとう!何事も器用な人っているのね。

問題がひとつ片づいたので、今日は、しばらく前から食べたいと思っていたひよこ豆のカレーを作る。
玉葱と大蒜、ショウガの微塵切りを中華鍋で飴色になるまで炒め、鶏のもも肉を炒める。色が変わったら、お気に入りのパタックスのカレーペーストを入れてさらに炒め、香りが立ったらトマトの水煮(缶詰半分)と水煮したひよこ豆(ガルバンソ)、スープを入れ、しばらく煮込む。
それから、ヨーグルトと好みのスパイス(今日は、クミンとコリアンダー)を入れて軽く煮込んで、終わり。
ちょっと面倒に見えるかもしれませんが、いわゆる日本風のカレーライスのカレーではなく、インド料理店風のカレーができあがります。ピクルスやラッシー(ヨーグルト、砂糖、牛乳、水をミキサーにかけるだけ)がよく合います。


(9月19日記)

今年は天中殺かいというほど続く八木の不運。
今日は朝から、血相変えた近所のおばさんの訪問。どんどんどんどんどん。
「お宅が大変なことになってるわよ」
っつっても、火事じゃあるまいし....なに?
と、おばさんに連れられて裏に回ってみると、なんと、我が家の2階の軒に蜂の巣が。
それもけっこうでかく、蜂が周囲をぶんぶん。むろん明らかに、蜜蜂くんではない。

目、皿。

で、杉並区などでは、区に通報すれば処分してくれるらしいが、ここ足立区では、区はそういう親切なことはしてくれず、駆除業者を紹介してくれるだけらしい。で、以前に、その駆除を依頼したご近所の話では、数万円かかるらしい。

目、皿。

とりあえずネットで調べてみると、どうやらコスズメバチの可能性濃厚。2階の軒なので、蜂の習性からみて、通行人が襲われる可能性は低いのだが、(うちの玄関から見えないだけで)いったん気になり出すと、かなり目立つ大きさだし、近所には子どもも多いので、放っておくのは、近所づきあい上、非常に問題があるのは確か。

「大家さんに連絡してみたら、どうでしょう」
おう。それはいい案だ。そして、知った。

.......うちは競売にかけられていた。

ええ、しばらく前から、斡旋した不動産屋が「この物件とうちはもう関係はありません。何かありましたら、直接大家さんに」などとわざわざ記した文書を送りつけてきたり、その数ヶ月後には、大家と電話連絡できなくなったり、不穏な噂を聞いたりと、まあ、いろいろ前兆はあったのだが。

それにしても......競売かよ。

まあ、居住権というものがあるので、誰が購入するにせよ、即刻家を明け渡さなくてはならないということはないだろうし、良心的な人が買ってくれたら、それはそれでいい方に落ち着くのかもしれないが。まあ、ヤっちゃんが買ったりしないことを祈るだけである。

ま、それはそうとして、大家はそういう状態である以上、エアコンに続いて、スズメバチも自力解決しかなさそうである。
待て、結果報告。


(9月18日記)

プロ野球、ついにスト突入。
がんばれ、古田&選手会。ここが日本の野球会の未来がかかる正念場です。
それにしても、ファンも、TV見てあ〜だこ〜だ言っているだけじゃなくて、9割がストを支持しているというならいうで、行動で示すべきだよね。
東京ドーム前で抗議集会するとか。読売新聞社前でデモやるとか。

で、話し合いがある程度ついて、スト解除になったとしても、「誠意を持って対応」なんていう「誠意がありそうにない連中の、言葉のパフォーマンスとしての『誠意』に期待するしかない」文言であるならば、選手会はそれ以上できなくても、「たかが」ファンが、「たかが」ファンの恐ろしさを経営者側に思い知らせることで、きっちり「誠意と言った以上は、誠意」を見せることを要求すればいい。
たとえば、巨人戦に観戦に出かけることを放棄して、球場をがらがらにしてみせるとか、巨人戦を見るのを放棄して、巨人戦の視聴率限りなくゼロ%にしてみせるとか。
近鉄百貨店・西武百貨店の不買運動とかいうのもいいかもしれない。
球場を「がんばれ古田」とか「がんばれ高橋」とか書いた、でかい布で巻くパフォーマンスなんかもありだな。

そう。ファンのストライキだ。
これはこわいぞ。

日本のプロ野球は、「広告効果」的な意味合いで球団持っているところが多いし、特に今回の騒動の本質的な問題は、まっとうな経営努力もしないで、パリーグの球団が、安易に「巨人戦」に乗っかれば、金になると思っているのが最大の問題なんだから。

それはそうとして、エアコンの掃除が話題を呼んでおります。

洗剤すすぎに園芸用の圧力式噴霧器を用いましたが、そもそも、エアコン用の洗剤には「水ですすげ」とは書いていません。ただ、成分などを見る限り、明らかにすすいでおいた方が良さそうなので、やったまで。
べつにセミプロ用の圧力式噴霧器でなくても、ふつうの霧吹きでも、ノズルを絞って水流を強くしてやればできると思います。ただ、水は最低1リットルぐらいは流した方がいいので、小さい霧吹きだと何回も水の入れ替えをしなきゃいかんので、ちょっと面倒というだけのことです。排水溝から濁った水が出ます。

気をつけるのは、フィルターをはずしたあと、カバーもねじをはずして取り、冷却ファンを露出させること。機械部分はビニールできっちり目張りして水や洗剤がかからないようにすること。

我が家の場合、寝室のエアコンの方が汚れていました。細かい埃がファンにかなりついていたので、古い歯ブラシで、ファンの網の目に沿って、そっと、かつ、丹念に埃をとばし、掃除機で吸い取ります。かなり丁寧にこの作業をやって、けっこうきれいにした状態で、洗剤をかけ、15分おいてすすぎました。

逆にリビングダイニングのエアコンは、埃はほとんどなくて、油汚れ。
調理台とは反対方向なんですが、やはり室内で調理をするからでしょうね。
カバーがじっとり油埃がついていたので、はずしてから、風呂場で洗うのが一苦労。洗剤は、アメリカで大ヒットとかいう、某知人おすすめのオレンジクリーナーと、重曹。
で、結論から言いますと、オレンジクリーナーも悪くはないのだけど、重曹を歯ブラシにつけてこすった方が、簡単によく落ちました。なので、高い洗剤は買わずに、重曹を買いましょう。
ちなみに、重曹は薬局で買うと割高です。スーパーの乾物売り場で、小さい箱50円ぐらいで売っているので十分。さらにいうと、掃除用品売り場に掃除用の重曹の500g入りというのも売っていることがあります。これがもっとも割安。

仕上げに、除菌用アルコールをさっと一拭き。これでさっぱりです。


(9月16日記)

今週はけっこう雑用を一気に片づける。
涼しくなってきたので、今年の夏、さすがに頻繁に使ったエアコン2台も徹底清掃。
フィルターやフロントカバーなどははずし、風呂場で洗う。露出させた冷却ファンは、歯ブラシと掃除機で丁寧に浮いている埃を取ってから、機械部分に丁寧に目張りをして、市販のクリーナーを吹きつけ、それから近所で借りてきた園芸用の圧力式噴霧器の水でよくすすぐ。
このやり方だと、送風ファン部分までは洗えないのが難だけれど、かなりすっきりします。かすかにしていた異臭も消滅。

というような厄介ごとはすぐ片づくからいいんだけど、ここのところ、自分も厄介ごとを抱えているってのに、どうも他人様のこじれた厄介ごとまでも、その解決を頼まれるという事例続出。
よく解釈すれば、どうやら、私は頼りにされているらしい。
というか、正確に言うと、最初のうち身内や知り合いに頼んで、いよいよ厄介になって手に負えなくなると八木に泣きつくというのがパターン化しているというか.....。
しかしながら、個人的に言うと、一番避けてほしいパターンなんだよなあ。
糸でももつれきってから持ち込まれると、ほどくだけで時間も手間もかかる。問題も、こじれてから持ち込まれるとそれだけ面倒になる。
それにしても、パソコンの動作不良から、国際問題に至るまで、世に問題は満ちているものです。
それはいいが、私の問題も、誰か解決してほしいものだ。求む、良心的な大家とジャーマネ。

なんつーて。愚痴っていますがな、めめしいぞ、八木。
たしか、愛用の高価なギターを泥棒に取られたうえに、大家に住み慣れたアパートメントを追い出され、しかも、大きな仕事をキャンセルされるという三重苦的状況に陥ったときに、「困難は人間を強くするから、平気だよん」とかましてくれたのは、天才ギタリストのフェリペ・バルデスくんだった(さすがに、世界で最も自殺率の低い国に住むラテン人だけのことはあるよ)が、まあ、それに比べりゃ、大したことないともいえる。(部分的にはいえないか....)

いずれにしても、ちとバテているようなので、今日は薬膳料理。
頂き物の金針菜(百合の花の乾物〜気鬱を晴らす効果があるそうだ)とクコの実、松の実、干椎茸、春雨でスープを作り、ピータン豆腐。メインはさて何にしようか。昨日、別の料理を作る予定だったのが、帰宅が遅くなったのでパックのままになっていた挽肉があったので、戻し残りの金針菜なども微塵切りにして加えて肉団子。さっと油で揚げて、黒酢で味を締めた甘酢餡をかける。
これが旨いんだな。困難は私を強くするかどうかは知らんが、旨いもんは元気をくれます。
(と、この程度のことで、気を取り直す八木も、わりとラテン系なのだった)


(9月13日記)

行ってまいりました。BBSでもご紹介した、クルド人難民のための集会。

ここで、初めて知ったことを何点か。
以前、私がこのモノローグで、日本外務省をぼろくそに批判しましたが、この件に関しては、外務省ではなく、法務省の問題のようです。
(だからといって、外務省が無罪ということではなく、自国の法務省が国際法破りをやっていたら、外向的見地から異議を唱えるのが、外務省の役割だろうし、それをやっていないのだから、同罪)
トルコ現地にのこのこ出かけて個人情報を開示した恥さらしは、入管職員だそうです。ちなみに、この渡航費などの費用は私たちの税金です。

現段階では、トルコ国籍のクルド人の難民申請は、日本では一件も認められていないとのこと。
もちろん、それ以外の人たちの難民申請も、ほとんど認められていないに等しい状況です。
難民には、いわゆる「経済難民」と「政治難民」がありますが、その後者、つまり、むしろ「亡命者」と呼ぶべき人たちに対しての日本政府の対応は、非常に冷たいということです。

しかも、驚いたのは、在留外国人が難民申請を行ってそれが却下されると、それをもって、従来の在留許可が取り消されてしまうこと。それで、難民認定がほとんど行われていないわけですから、ある在留外国人が難民申請をしてしまうと、むしろ、強制送還まっしぐらへのレールを敷かれるか、あるいは、刑務所状態に近い収容施設入りになってしまうというわけ。
これは、まるで「悪意の陰謀」といわれても仕方がないような話です。

では、なぜ、クルド人が日本に多いのか。
その答えも明確です。日本政府とトルコ政府は仲が良く、査証免除協定を結んでいるため、日本人はトルコへ査証なしで旅行ができます。同様に、トルコ国籍の人も査証なしで日本に入国できるため、日本は「逃げてきやすい」国であるわけです。
しかし、悲劇的なことに、トルコで迫害を受けているクルドの人たちには、日本という「自称先進国」が、想像を絶する「人権後進国」であり、国連やアムネスティにいかに非難されている国であろうと、そこから命からがら逃げてきた難民の人たちは、収容され、強制送還されて、かえって危険な目に遭うという事実を、事前に知ることはできなかった。
それが、彼らの「追いつめられている」状態の本当の意味です。

で、難民認定されず、在留許可も取り消され、そのせいで不法滞在者となった彼らは、働くこともできないし、生活保護も拒否されるわけ。
その挙げ句、裁判に訴えれば、その裁判では法務省は敗訴しているにもかかわらず、まだ、嫌がらせのような(要するに、メンツのため)控訴を続け、挙げ句に、入管職員を現地に派遣して、難民申請者の個人情報や家族親族の情報までもを、トルコ政府にチクっていると。
やるじゃないかい、法務省。まるで映画にしてやりたいような悪役ぶりですね。

そこまでして、法務省=日本国が難民を認めたくない理由の後ろには明らかに、「アジア〜アラブ系民族に対する根強い差別意識」を背景に、「トルコ政府の機嫌を損ねて、トルコ政府の背後にいるアメリカ政府の機嫌をちょっとでも損ねたくない」というのが見え見えです。卑屈ですね。

EUがトルコ政府に圧力をかけて、ほんのわずかながらもクルド人の権利を向上させようとしたり、フランス、ドイツといったEU諸国が、千単位でのクルド人難民を受け入れているのとは天地の差です。
ほんとに、恥ずかしい。
バカで卑屈な政府を持つと、恥をかくのは、国民です。

集会で、クルド人の代表のカザンキランさんたちが言いました。
「トルコへ行くならイスタンブールだけではなく、クルディスタン(クルド人が住む地域)に行ってみてください。そこで何が起こっているか自分の目で見て、人に伝えてください」
そのとおりだ。まったくそのとおりだ。
しかし、トルコ軍のクルド人弾圧のゆえに、事実上の準戦争下にあるクルディスタンで、もし、日本人が事故にあったり、事件に巻き込まれたら、日本政府はなんというだろう。
あの人質バッシングが、もう一度?

つまり、私たちは、そういう国にいるのだということを、自覚しておかなくてはならない。


(9月5日記)

ええと、立て続けの二つのライブに、みなさまご来場ありがとうございました。
今年の夏はまたとんでもなく暑かったうえ、まったく性格の違う内容でしたので、ちょっとリハーサルも大変でしたが、なんとか、及第点をつけられたかな。

24日の黒田京子さんとのライブは、初顔合わせということで、お互い、ちょっと必要以上に譲り合ってしまったかなという気はしますが、いままでにない八木を聴いていただけたかと思います。
ベサメ・ムーチョやキサス・キサスといった超スタンダードも、ああいうふうに聴くと、別の味わいがあるでしょ。

で、このライブで歌って好評だった『そら』。
大阪出身のロックバンド『ソウルフラワーユニオン』の中川敬さんの作品です。しばらく前から彼の作品を歌ってみたいなあと思っていた矢先、彼のライブの楽屋で「八木さん、日本語でも歌ってや」という話になり、決断した次第。
じつは、もう一曲、『満月の夕』という素敵なバラードがあって、これも候補にしていたのですが、黒田さん曰く。「八木さん、この曲、すごく有名で、いろんな人がすでにカヴァーしていますよ」
うそっ?!ほんと??
インターネットで検索してみると、ほんと、すでにいくつかのカヴァー・ヴァージョンがありました。いやー、メジャーやんか。
ということで、どうせやるなら、すでに存在するカヴァーと違う八木の世界観をきっちり構築しておかねばなりませんね。(いや、ほかにカヴァーがなければ、世界観はどうでもいいってことじゃないですが)
で、季節感が違うこともあり(笑)、この曲も好きで歌いたいので、いずれやります。いずれやりますが、もちょっと熟成させてからね。

最後に、このライブの会場でも申し上げたことですが、私の長年の知人で、航空券の手配などでよくお世話になっていた梅村さんが、8月19日にお亡くなりになったことを、別の知人からのメールで知って、ちょっとショック。心臓疾患の急死だったそうです。
彼とは、互いにまだバックパッカーだった頃からの知り合いでした。大阪のマイチケットという旅行代理店で彼がアルバイトを始めたときに初めて会ったのを思い出します。
人権問題などにも関心が深く、いろいろ情報を寄せてもらってもいました。
なんで、いい奴ほど、先に逝ってしまうんだ!

それから、30日のHAVATAMPA。これは毎度の「コテコテ&格闘技系」ですが、根城の六本木ピットインが閉鎖になったため、赤坂Bフラット初登場となりました。お店の方々にもとても気を遣っていただけて、気持ちの良いライブができたと思います。ちょうど来日中のキューバのバンド、チャランガ・アバネーラのパーカス奏者オルランディート氏の乱入もありましたね。
この機会にGalleryページの写真も更新しましたので、ごらんになってください。

この立て続けの2種ライブ、両方いらっしゃった方も何人もいらっしゃいました。この月、お盆休みもあったのに散財させてごめんなさい。
それから、台風もしくは月末のため涙を呑まれた方、次回のライブは台風と月末を避けるように鋭意努力しますので、許してね。


(8月17日記)

>>祖国の大地深く、民衆の叫びがわき起こる
>>新しい夜明けが告げられ、民衆は歌う....

かつて、70年代にチリ人民連合のテーマだった「ベンセレーモス」の合唱に胸をときめかせた方にクイズです。
現在のチリでベンセレーモスを歌う人は、もう誰もいませんが、では、あの歌は、今、どこで誰が歌っているでしょうか???

答えはベネズエラです。

日本ではほとんど報道されないし、その報道とて、かつて米国がアジェンデ政権期のチリでやったのと同じく、徹底的に反大統領。そもそも、ベネズエラの主要マスコミが右派で、毎日、自国で反政府宣伝をやっているというような状況下で行われたベネズエラの大統領信任投票で、日本をはじめ、米国側大勢の予測を裏切る結果が出ました。

大統領の失政のせいで、国内は経済混乱に陥り、大統領は親衛隊を使って民衆を抑圧しているはずのベネズエラで、予測を裏切って、土壇場で民衆は投票所に長蛇の列を作り、なんと投票率80%超。そして、チャベス大統領信任です。

さすがにチリのクーデターみたいなことを今はできないので、チャベス罷免のために、ありとあらゆる国内混乱のために策謀を尽くしてきた米国資本と、それに追随するベネズエラの右派富豪たちの落胆ぶりが目に浮かぶようだ。
そして、そういう意味では、チャベスが大統領であるがゆえの経済妨害や国内混乱を体験しつつ、しかも、TVもラジオも新聞も、反チャベスキャンペーンを繰り広げる中で、58%の人々がチャベスに投票したということの重みを、考えてもらいたい。

確かに、いまのあの国には、「ベンセレーモス」が似合う。
もちろん、夜明けのあとは、晴れの日でないのは確かだが。


(8月15日記)

オリンピック開幕しましたね。
で、その入場行進を見ていて、思ったこと。
民族衣装は美しいということ。

日本の選手団の衣装につきましては、群を抜いて馬鹿っぽかった前回のてるてる坊主よりは「マシ」ではありましたが、群を抜いて安っぽかったですね。
いくら平服でといわれても、パーティーでユニクロは違うだろう、やっぱり。
アテネが暑いらしいと騒ぐなら、花火柄の浴衣でも着ればよかったのに。

いまさら民族衣装を着たくないならないで、日本には豊かな色彩感覚があるはず。
鶯色、茜色、藍、萌葱、江戸紫。そういう豊かな色をどうして使わないのだろう。

自分が足を踏んだくせに、それに対して反省の色もないから、相手が怒ったからといって、都合の悪いときだけ、「スポーツに政治を持ち込むな」などとズレたことを言うような、身勝手な「愛国心」を発揮するより、まっとうな伝統的美意識というものを、もうちょっと大事にしてもらいたいものだ。

そういえば、以前、能衣装の復元をなさっている方にお話を伺ったことがあるが、その方は、こうおっしゃっていた。
「江戸期までの染色や工芸の技術と、明治以後のものは、別物といっていいほど水準が違います」

いわゆる欧米先進国に追いつけ追い越せの中で、丹念な伝統的な仕込みや職人芸を切り捨て、効率を求めた結果であるらしい。
日本の明治維新とは、そういう伝統的美意識を捨てたところから来ているのだとしたら、悲しいことだ。それは、政治的な意味を取り去った「靖国神社」そのものの建築にも現れているのだろうけど。


(8月7日記)

暑い日が続きます。
で、こないだからラタトゥイユを何回も作っています。簡単で美味しくて栄養があって、夏ばてでも食べられる。

これだけ暑いと、火を使う料理もなかなか面倒なのですが、作り方も実に簡単。
茄子、ピーマン、たまねぎ、にんじん、ズッキーニ、パブリカなど、あり合わせの夏野菜を適当に切ります。これは、上記のものを、わざわざ全部そろえる必要はありません。あり合わせで結構。
(ただ、茄子は入れた方が良いです。ズッキーニもできたらあるほうがいい。玉ねぎのかわりに白ネギでもOK。にんじんは、3mmぐらいの薄切りにします)
フライパンか、浅めの鍋にオリーブオイル(バターやラード不可)を入れて、にんにくのみじん切りをさっと炒め、香りが出てきたら、野菜を入れます。かるく油で炒めてから、トマトの水煮の缶詰を半分入れ、塩胡椒。(塩は小さじ1/2ぐらいかな)。こくのある味がお好きなら、スープのもとを少し刻んで入れます。
缶に半分残ったトマトの水煮は、タッパーかなにかに入れて、すぐ使う予定がないなら冷凍しておいて、その缶に白ワインを少量注ぎます。じゃぶじゃぶと残ったトマトを白ワインで溶かして鍋に入れて(せこい!)、フタをして、弱火で20分。
好みで、バジルやオレガノを入れると、もっとおいしくなります。
水を入れなくても、野菜と水煮トマトから水気が出て、じゅうぶん美味しく煮えるのですが、鍋にもよりますので、始めてお作りになるときは、途中で様子を見て、あまりにも水分が少なくて焦げ付きそうだったら少し水を足してください。
で、できあがりのあつあつは、それはそれでおいしいのだけど、夏場は暑いので、これを冷やしておくわけです。粗熱が取れたら、適当な容器に入れて、冷蔵庫に。
したがって、昼間のうちに作っておいて、夕食に出すのが正解。
バターが駄目なのは、冷えると脂肪分が固まってしまうからです。
つめたーいラタトゥイユは、適度な酸味もあって、とってもおいしいので、作ったことのない方は是非、お試しください。


(8月5日記)

先月7月13日から、青山の国連大学前で、クルド人難民の親子が難民認定を求めて座り込みをやっている。
http://www.mkimpo.com/diary/2004/kurd_sit_in_2004.html

そもそも、亡命者や難民をまったく受け入れないことを国是とする「自称・先進国」意識ってなんなんだろう??
米国の言いなりにイラクに自衛隊を送り込んで、NGOならたかだか数百万円程度でできる援助に数億円の血税を注ぎ込んだあげくに、現地サマワの市長に「期待はずれ」といわれるような真似をしているぐらいなら、そのあたりの法律改正をするなり、外務省職員に人権教育でも施すべきだ......と考えていたら、今度は、やるにことかいて、その外務省が、彼らクルド難民を難民認定するどころか、彼らを迫害する側であるトルコ政府に、個人情報をほいほい提供していたことが発覚した。
それも、向こうから強要されたというのですらない。
わざわざご丁寧に、外務省職員を現地に派遣して、トルコ政府に自分から連絡を取って、個人データを開示して見せたうえ、その家族親族のところにまで、呑気に案内したのだと。
阿呆か!!!
いや、それでは足りない。
「阿呆かおまえは!前から阿呆やとは思てたけど、ほんまに脳みそあんのか!いっぺん死んでこい!」
ぐらいのことを、耳元で100回怒鳴ってやりたいぐらいの『愚挙』、である。

さっそくそれを知った国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)から抗議があったそうで、それは当然。むろん、UNHCRははっきりと、そのような行為を「禁止」しているからだ。
しかし、UNHCRが禁止しているとかそういうことではなく、自分の頭で考えて、「それは『人間として』、やってはいけないことだ」ということが、どうして外務省にわからないのだろうか。
以前2002年5月の、中国・瀋陽の日本総領事館事件で、あまりにも、人権感覚のなさと国際法に対する無知をさらして、国際的な恥をさらしたあげくのこの事件なのである。

そこで皆さん、質問です。
イラク人質事件にせよ、自衛隊駐留問題にせよ、北朝鮮との交渉にせよ、それらを最前線でやっているのが、こういうことを平気でやってしまって、「怒られるまで、それが何故いけないのか」さえ、理解できないような人たちなのだという恐るべき現実を、自覚していらっしゃいますか?


(8月4日記)

さて、それで、黒田さんとのライブのリハーサルの模様をちょっとだけご紹介。

黒田さんとは、去年、大阪のプロデューサー岸田コーイチさんの紹介ですっかり意気投合。というか、彼女が私のCDを気に入ってくださって、一緒にやってみたいというお話があったのですが、その次点は、お互いスケジュールが会わないまま、それっきりになってしまっていました。

で、今回、JZ Bratにお話をいただいて、さっそく、このユニット結成話が再浮上。

黒田さんは、坂田明トリオでのフリージャズをはじめ、ブレヒト、クルト=ワイル作品の演奏などで、ドイツやオランダで高い評価を浴びる、ゲルマン系の方。
ラテン系の八木とでは、「水と油の組み合わせじゃないっすか」とおっしゃった方もおられるのですが、ふっふっふ。甘い甘い。

ここは、水と油ではなく、醤油とオリーブオイルのドレッシング、いやいや、K1的異種格闘技の楽しさを満喫できようというものです。
とはいえ、異種格闘技をやるには、どの技はOKでどの技は反則かというようなルールの設定が重要なわけでして、それにけっこう手間を取っておりますが、どうぞご期待あれ。なかなかおもしろいライブになりそうです。
まさか、八木があの歌を......というような選曲も登場の予定。
八木はたぶん大晦日の「曙」状態にはならないと思いますので。

ところで、アテネに長島が行かないことが決まったにもかかわらず、日本チームの監督は(名目だけ)長島なのだそうだ。
そもそも、脳溢血で倒れた人間にいつまでも未練たらしくしがみつくのが異常だった。長島のことを真に考えるのであれば、妙なプレッシャーなど与えず、しかるべきペースでリハビリに専念してもらうのが筋だろうし、野球のことを考えるのであっても、行けるのか行けないのかわからない監督で引っ張るのではなく、別の人選をするべきだった。
では、なぜ、長島に固執したのか。答えは簡単だ。幼稚とは、そういうことだからだ。


(8月2日記)

春にチューンアップの後、調子が悪くなって、ハードディスクの初期不良〜交換の憂き目にあった、わが、Macintosh G4にまた異常。
またまた、名古屋の知り合いのショップに修理に出したら、今度は、マザーボードがご臨終になっているという宣告。で、アップルの正規の基盤で修理すると、部品だけで12〜13万円かかるので、どうしたものかとご相談。
がぁ〜ん。それって、機種のスペックを考えたら、新しいのを買うしかないってことですがな。
それは〜〜〜、ないだろう。

その矢先、今度は、TVがいきなりシュッと消えた。
文字通り、25インチフラット画面のTVを見ている最中に、なんの脈絡もなく、シュッと消えたのである。
それは〜〜〜、ないだろう。

先日、コーヒーメーカーが壊れてからというもの、なんでこんなに電気製品の故障が続くのでしょうね。しかも、TVだって、4年前に買ったものだから、修理代金によっては、新しく買った方がいいということにもなりかねず、そうなると、今月の出費は笑えない。
と思ったら、なんか、オーブンレンジの調子まで、ヘン......。

そして、とどめに、ピアニストの黒田京子さんからお電話。
「うちのリハーサル室のクーラーが壊れたので、とてもリハーサルは無理です」
で、リハ延期。

八木、なんか悪いものでも憑いてるかぁ。
(ムンクの「叫び」のポーズで)

顔面蒼白、気のせいか肩になんか重〜いものまで感じつつ、とりあえず、TVの修理を依頼。
ところが、SONYのサービスセンターから、すぐに修理にきてくれたおじさん、値段の見積も言わずに、さっさとTVを開腹し、部品をどんどん取っ替えていく。
あの、ふつうは、見積出しませんか??修理代はどうなるのか、どきどきしながら見ていたら、なんと、
「今回は、お代はいただきません」
酷暑のさなかに出張してきて、部品も取っ替えてくれて、0円。

どうも、リコールとまではいかないが、それに近い製品であったか、部品が不良ロットの疑いらしい。(と聞いたわけではない。これは八木の推測です)
ともあれ、一安心。

で、問題のパソコン。
4年前の機種を部品12万+修理代を出して修理なら、新しいものを買う方が現実的という点で、修理屋さんと意見は一致。
で、損害額を最小にするのと、この愛機を成仏させてやるために、粗大ゴミにしたりはせず、ばらばらにして、パーツをYahooオークションにでもかけるのがいちばんいいという結論に落ち着く。春に取り替えたばかりのハードディスクやメモリは、まだメーカー保証もあるし。
と、その電話を切った直後、ふと思い立ってオークションを検索してみたら、なんと、私のG4に適合するマザーボードの中古が格安で出品されているではないかっ!
すぐに名古屋に電話して解体作業を止めてもらい、その夜のオークションに参戦。18,000円で落札する。相手も中古パーツショップなので、初期保証はしてくれるそうな。やった!
こうして、お葬式をあげる寸前で、愛機は復活の模様である。

しかも、オーブンレンジも、異常は一度だけで、いまのところ問題なし。(ひょっとして、設定ボタンを押し間違えていただけの可能性あり)

なんか、敗者復活の気分であります。
皆様、最後まで希望は捨てないでね。


(7月27日記)

ガデスに続いて、ポルトガルギターの名手カルロス・パレーデスの死。
ちょうど、一月ほど前に来日していた若手ファド歌手クリスティーナ・ブランコの一行と彼の話をしていたところだった。クリスティーナのパートナーであり、且つ、彼女のオリジナル曲のほとんどを作曲しているポルトガルギター奏者クストディオの使用しているギターは、カルロスのものを借りていると言っていた。
彼らの話では、カルロスは、リスボンの、老いた音楽家が共同生活を営んでいる老人ホーム(なんて素敵なところだ!)にいるということだった。

その直後、今度は中島らも事故死。酔っぱらって、階段から落ちたそうだ。実は私は彼のファンだった。多彩な人ではあったけれど、小説家としての彼は凄いと思っていた。「ガダラの豚」は傑作だ。
なんとまあ彼らしい死に方だろう。
私も、死ぬときには、「なんとまあ八木らしい死に方だ」といわれるような死に方をしてみたい。


(7月22日記)

アントニオ・ガデスが癌で亡くなりました。
ご存じでしょうが、スペインの誇る踊り手、というより、フラメンコを芸術に高めたひとというべきでしょうか。
彼の父は筋金入りの共産党員で、フランコ政府軍に捕らわれ、拷問を受け目を抉られたとも言われています。
彼も、1936年、スペイン市民戦争の始まった年に生まれ、後に偉大なるダンサーと称えられるようになっても、一貫して、共産主義者であることを隠しませんでした。自分で、フラメンコ界のチェ・ゲバラを自負していたそうで、それもあって、彼の遺灰は、キューバに葬られることになったようです。

ガデスの写真をご覧になりたい方は、こちらにどうぞ。


(7月20日記)

プロ野球1リーグ制か2リーグ制か。
大筋を見ると、巨人渡辺オーナーとパリーグ球団オーナーたちは、1リーグ制賛成。というか、強行採決状態。残りのセリーグオーナーと大半の選手、ファンは1リーグか反対という感じかな。

でも、それ以前に、なぜ、ここまで野球が面白くなくなったのか。とくにパリーグに客が集まらなくなったのかを真剣に考えなければ、たとえ1リーグにしても、先は見えている。
極端なまでに巨人一極集中的なシステムを変えない限り、そして、そのような歪んだものを良かれと考える人たちが、プロ野球を牛耳っているというのが問題だということは、もう、みんなわかっている。
金と権力の力で有力選手を集めて、それで常勝チームを作って得意になりたいというようなこと、また、そういうことに対して異を唱えるでもなく喜んで追随するということは、まともな大人の感覚ではなく、ましてやスポーツマンシップからはもっともかけ離れ、アレも欲しいコレもほしいと駄々をこねる、馬鹿親に甘やかされた幼児の発想でしかない。
その幼児(たち)が支配する世界はSF的で恐ろしいが、日本に限っては、現実であったりする。


(7月15日記)

参院選直前にして、そこまでやるかぁという一発が出ました。曽我夫妻ご対面に使われる税金は、おそらく、イラク人質救出費用よりも上でしょう。また北朝鮮に恩を売られたわけですものね。
そこまでやらなければやばいと思った小泉政権の側から見れば、ここのところの年金法案の強硬可決や、国民を舐めきったからつい出てしまった暴言に、さすがに暢気な国民もむっとして、支持率下降したからでしょうね。
そして、参院選。

ここのモノローグを読むような方に敢えて言うのも失礼なので、選挙に行こうみたいなことは書きませんでしたが、ここまでバカにされても、まだこの程度の投票率か、というのが正直な気持ちです。

で、新聞は、自民党が負けたの、民主が躍進したのと書いています。
たしかに、表面的にはそう見えます。
しかし、たぶん自民党に危機感はないでしょう。公明党と議席を合わせれば、与党は絶対多数を維持しているし、民主党が伸びたとはいえ、一時的なブームに乗っているだけ。次の選挙まで追い風に乗っていられるかは、疑問です。
今回の選挙の特徴的なことは、そういう問題ではなく、社民と共産......とりわけ共産党が惨敗した選挙であったという点です。おそらく党の存亡の危機にあるといってもいいぐらいの。

じつは、こうなることは、小選挙区制という大政党に極端に有利な制度が採用された時点で、十分予測できていました。で、もちろん、二大政党制を望まない人たちは、小選挙区制に反対したのだけれど、結局、これが採用された時点で、それが制度となったわけです。

その事態に対して「ならばどうするか」ではなくて「ただ反対」。小選挙区制だから不利。二大政党制の流れに抗しきれなかったなどと、今回、共産党の上層部はおっしゃっているようだが、「そんなこと言ってるから駄目なのだ」
原則論は結構だし、それを大事にすることは重要だけれど、原則論だけに拘泥して、なんの応用力も打開策もなく、何とかの一つ覚えでは、政党が滅びるのも時間の問題であるということに気づくべきだったし、今からでも遅くない。気づくべきだ。

今回の選挙で、自民党は公明党の多大な選挙協力を得たおかげで、目標より少ないとはいえ、49議席を獲得した。もしも、公明党が自民党に選挙協力せず、すべての選挙区で独自候補を擁立していれば、一人区での自民党の票は割れ、自民党は民主党に惨敗したはずである。
その結果として、公明党は、自民党に対して大いなる発言権を有することになった。

同様に、今回、もし共産党が、独自候補の当選が事実上無理であると考えられる一人区で、あえて独自候補を擁立せず、沖縄県でやったような「野党連合」的選挙協力を、民主に対しておこなっていれば、なんと1人区8議席がひっくり返っていた計算になる。
そうなれば、自民41議席。民主58議席。
それだけではない。与党計51議席。野党系63議席。
たとえ、公明党が自民党に多大な貢献をしていたとしても、それでも、自民と与党連合は、歴史的な惨敗をするはめになったのだ。世界のマスコミは、イラク派兵への国民の反対表明と大々的に報じただろう。年金法案の廃案化も具体性を帯びてくる。

共産党の最大の言い分として、「しかし民主党も改憲をしようとしている政党である」というものがある。それはもっともだ。しかし、しつこいようだが、原則論は原則論として重要だが、一方で、政治というのは理論だけではない生き物だ。現実的な判断がどのタイミングで、どれだけできるかがもっとも重要な世界なのだ。

しかし、前回のアメリカの大統領選挙で、共和党のブッシュが当選した最大の功労者は、じつは緑の党のラルフ・ネーダーだったという事実を、よく噛みしめるべきだ。有名な消費者運動家で、民主党と支持層が重なる(そして、現実には、大統領当選はあり得ない)ネーダー氏が出馬し、何十万票かを集めることで、それは、民主党のゴア候補の足を引っ張り、ブッシュを有利にした。
というより、接戦だったあの選挙では、ブッシュを助ける決定打となった。
そして、今回、ケリー陣営に対して苦戦するブッシュ陣営から、ラルフ・ネーダー陣営に献金が行われていたことがすっぱ抜かれている。敵の足を引っ張るやつは味方。ラルフ・ネーダーの取る票は、そのまま、ケリー陣営の損失になるからだ。

共産党が独自路線を貫くのは結構だ。しかし、この事実、つまり共産党が意地になって全選挙区擁立をやることが、結果的に自民党をとっても助けているという事実をどう考えるのか。
そして、そうやって自民党に尽くしたところで、公明党と違って発言力ができるわけではないから、選挙区制は変わらないし、じり貧状態は変わらないだろう。
それより、国家権力が共産党をほんとに恐れるようになるのは、「原則は曲げないが、必要であれば、いつでも野党連合の一員として大同団結ができる」共産党になることだ。
腐っても鯛。共産党には真面目な党員と支持層がある。選挙区で、死票になることすらいとわず投票する人たちだ。この数百万票のうち、一人区の分が死票でなくなれば、それは与党にとって、もっともおそろしい武器となる。
そして、そういう野党連合が政権を取れるようになれば、選挙区制のいまひとたびの改革を議論に載せることもできるかもしれないし、野党第一党がやはりろくでもないということになれば、それはそれで、また「武器」をつかって、叩き落とすことができるのだ。つまり、そこに共産党の存在意義も発言力も再生される。民主党の右傾化への抑止力にもなるだろう。

共産党に限らない。社民党も今回不本意な結果に終わっている。救いがあるのは、彼らは選挙協力をやったことだ。社民票が民主党に流れたことで、勝てた選挙区は少なくないはず。
しかし、社民だけでは弱い。辻本清美の秘書疑惑から、土井たか子の年金不払い問題など、一連のイメージダウンを誘うトラブル続きで、ほうっておくと、民主に事実上の吸収合併になってしまいかねない。
だからこそ、ここで、小異を捨てて、野党連合ができないものか。
そうでなければ、日本の政治は、本当には変わらない。


(7月14日記)

ええと、モノローグ以外のすべてのページでも、文字の大きさの調整がお好みでできるようにいたしました。

もともと、このサイトのいまのデザインは、2001年の春に作ったもので、そのころは、「一週間でわかるホームページ」みたいな本を読んで、見よう見まねで、HTMLを書いていたものだから、いま見ると、けっこう稚拙なソースになっています。それを継ぎ足し継ぎ足しでやってきたものなので、ついでに、そのあたりも、きちんと整理。見た目はほとんど同じでも、すっきりした構成に書き換えました。
で、そのために、HTMLを(というより、正確には、文字の大きさや画面色、レイアウトなどを制御するスタイルシートを)かなり書き換えたのですが、その結果として、Netscape Navigator4.7使用の方が読めなくなってしまったというご指摘を、速攻でいただいてしまいました。
どひゃあ。あちら立てればこちら立たず。(泣)

だもんで、また、ああでもないこうでもないと、プログラムをいじくっておりました。
(理由は、Netscape Navigator4.7では、スタイルシートが不完全にしか対応していないため)

いま、いちおう、Internet Explorer(5以上)と、Netscape、Opera(6.0)、Mozilla、Netscape Navigator 4.7に対応していると思います。Internet Explorerは、WindowsとMacintosh両方で確認しています。
むろん、ブラウザと環境によって、見え方は若干変わります。
おすすめは、Internet Explorer(5以上)と、Netscape、Mozillaのいずれかです。

それ以外は、ブラウザを持っていないので、勘弁してね。


(7月9日記)

参院選のポスター。「この国を愛し、この国を創る」
まあ、フレーズのセンスはおいとくとしても、あの字はどなたの字でしょうね。
印刷字体でも良いものをわざわざ手書きにしているのだから、よほど自信がおありなのでしょう。
たしかに、字は、その人を表します。

それはもちろん、上手下手の問題ではありません。
ヘタくそでものびのびとした字、躍動感のある字、丁重な字、せっかちな字、乱暴な字、チマチマした字、小綺麗だけれど小手先だけで書いているような字、お手本通りの字。
いちばん恥ずかしいのは、勘違いしている字。ヘタなのに、自分では上手な自信過剰。まるでカラオケでマイクを握りしめて離さないオヤジみたいな、謙虚さのない字。

あの自民党のポスターの文字を見るたびに、「いけませんねぇ」と言いたくなるのは私だけでしょうか?


(7月1日記)

少し前に、カート・ヴォネガットJrの『坑道のカナリア』論をご紹介したが、じっさいに、そのとおりのことが私の周りで起こっているから、不思議。
それまで、政治には無関心と言い切っていたような画家や染織家や音楽家や写真家といった人たちが、かつてなく「気持ち悪い」と感じているらしく、立ち寄った銀座のギャラリーで、加熱した政治論議になることもしばしば。しかも、それがそのへんの「公正中立な」新聞より、はるかに辛辣だからすごい。
抽象画ということもあって、一見政治的には見えないのだけれど、それでも自分のこの作品は「イラク派兵反対」の想いを込めて描いたと語るひともいた。ホームページの日記やらお知らせが、突然政治的になってきている人もいる。
皆、一様に、「なんともいえず気持ち悪い」「これはなにかしないといけない or 逃げだしたい」と感じるという。神経科で抗不安剤をもらってきたという人までいるから、これは、理屈じゃなくて、もう本能的なものですね。
まっとうなカナリアは、坑道に溜まりだした毒ガスを感知して騒ぎはじめたというところ。
そういう八木も、かつてなく気持ち悪い。あまりの気持ち悪さに、次のライブでは、かつて歌わなかったような歌も歌うかもしれない。いや、ほんとにやるかはともかくとして、そういう強迫観念にはとらわれています。

そんな中での、イラク前倒しの主権委譲。出席者数人だったという。
絵に描いたような傀儡。茶番劇はどこまで茶番劇なのだろう。
そして、そんな政権の依頼を受けて、国民のコンセンサスどころか、議会にかけることすらせず、多国籍軍参加を強行する小泉政権。これを独裁といわなければ、なにが独裁なのか。


2004年上半期のモノローグを読む

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